時間は一定ではない!不定時法を採用していた和時計とは?

和時計は、江戸時代を中心に日本で独自に発展した時計です。西洋の時計技術を取り入れつつ、当時の日本の生活様式や時間の概念に合わせて工夫が凝らされています。

和時計の主な特徴

和時計の最大の特徴は、不定時法に対応するために作られている点です。

不定時法とは

夜明け(日の出)と日暮れ(日の入り)を基準として、その間(昼)と夜をそれぞれ6等分し、時間を数える方法です。

これにより、季節によって昼の長さと夜の長さが変化するため、一刻の長さが常に一定ではありませんでした。夏は昼の一刻が長く、冬は夜の一刻が長くなります。

時刻の数え方

時刻は九(夜明け/日暮れ)から四(真昼/真夜中)まで数え、九から四を繰り返します(九、八、七、六、五、四)。

この数字は、元々、仏教の鐘のつき方や、番人の打つ太鼓の回数に由来しています。

不定時法への対応メカニズム

一刻の長さが変わる不定時法に対応するため、和時計には様々な工夫が施されました。

割駒式文字盤

文字盤の時刻を示す目盛りの駒(時符)を、手動で毎日または数日おきに動かし、昼夜それぞれの長さに合わせて配置し直します。

重錘の調節

時計の動きを制御する振り子の重錘(おもり)を、季節に応じて付け替えたり、位置を変えたりすることで、一刻の長さを調整しました。

二丁天符

一つの時計に異なる振動周期を持つ二つの調速機(天符)を組み込む構造です。昼用の天符と夜用の天符を切り替えることで、昼夜の時間の変化に対応しました。

不定時法では、時間は一定ではない

不定時法は、自然のリズムに合わせて人々の生活に密着した時法であり、主に以下の考え方に基づいています。

昼夜の6等分

不定時法では、まず日の出から日没までを「昼」、日没から次の日の日の出までを「夜」と区切ります。

この「昼」と「夜」を、それぞれ独立して6等分し、その一つの単位を「一刻」としました。

  • 昼の一刻(昼六ツ、昼五ツ、…)
  • 夜の一刻(夜六ツ、夜五ツ、…)

季節による変動

太陽が出ている時間(昼)と沈んでいる時間(夜)は、季節によって長さが大きく変動します。

夏至の頃は、昼の時間が非常に長くなります。このため、昼を6等分した「昼の一刻」は長くなります。逆に夜の時間は短くなり、「夜の一刻」は短くなります。

逆に、冬至の頃は昼の時間が短くなります。このため、「昼の一刻」は短くなります。逆に夜の時間は長くなり、「夜の一刻」は長くなります。

このように、季節が変わるたびに「昼の一刻」と「夜の一刻」の物理的な長さ(分や秒で測った時間)は変化するため、「時間は一定ではない」と言えるのです。

この一定ではない時間を正確に表示するため、和時計には、季節の変化に合わせて自動的、または手動で機械の運転速度や文字盤の目盛りの間隔を調整する複雑な仕組みが組み込まれていました。

和時計の種類

代表的な和時計の形式には以下のようなものがあります。

櫓時計
やぐらどけい
台の上に櫓(やぐら)を立てたような形状。初期の形式で、重錘が下がりきるまでが動作時間となります。
枕時計
まくらどけい
櫓時計を小型化し、枕元に置けるようにした形状。
尺時計
しゃくどけい
櫓時計の重錘が下がると、目盛りが刻まれた板(尺)が連動して動き、現在の時刻を示す形式。
印籠時計
いんろうどけい
印籠のように持ち運びしやすい小型の時計。多くは香箱型のムーブメントを持つ。
掛時計
かけどけい
現代の掛時計に近い形式。重錘を巻き上げる必要があるものが多い。

歴史的な背景

16世紀後半にヨーロッパから西洋の機械時計が伝来し、その技術が基礎となりました。

江戸時代の鎖国政策により、西洋の新しい技術が入ってこなかったため、既存の技術をベースに不定時法に対応させるという日本独自の進化を遂げました。

明治時代に西洋と同じ「定時法」(1日24時間で一刻の長さが一定)が採用されたため、和時計はその役割を終え、西洋式の時計に置き換わっていきました。

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